先日facebookで「暇と退屈の倫理学」という著書の紹介があり、なんとなく面白そうだったので図書館で借りて読んでみました。「
倫理学」という言葉を含むタイトルから連想するほど小難しさは少なく、比較的平易に書かれていて読みやすい本でした。ただ、この著書を評するには自分はあまりにも無知であるということがよくわかりました。著者は、哲学者をはじめ様々な分野の先賢たちの言葉を紹介し、評価、批判しながら著者の「暇と退屈の倫理学」を展開していきます。ここで紹介されるラッセルもハイデッガーもマルクスも、ユクスキュル(誰じゃそれ?)の著書を私はろくすっぽ読んだことありません。著者が先賢の言葉を紹介している部分も「…と著者は理解している」と留保をつけざるを得ない。というかそういう留保をつけた方がいいと思いました。著書全体が先賢の言葉との掛け合いを、読みやすく表現しているので、よもすると先賢の著書を読んでもいないのに「知っているつもり」になってしまいそうです。
私が特に印象に残ったのは、浪費と消費の対比部分です。「浪費は生活に豊かさをもたらす。そして、浪費はどこかでストップする。それに対して消費はストップしない。」「消費者が受け取っているのは、食事という物ではない。その店に付与された観念や意味である。この消費行動において、店は完全に記号になっている。だから消費は終わらない」
職業上、非正規雇用問題や労働条件悪化問題に接する機会が多いのですが、以前からこれらの問題は、どこかのワルモノよってもたらされているのではなく、私たち自身の生活様式が、これらの問題を生み出し、負の循環に陥らせているのではないかと、そこはかとなく感じていました。著者は浪費と消費を分けて考えることを提言し、「消費は限界がないから延々と繰り返され、延々と繰り返されるのに満足がもたらされないという先ほど指摘した悪循環…[中略]…消費社会は満たされないという退屈を戦略的に作り出し、人々をその中に投げ込むことで生き延びていると言えるかもしれない」と主張している部分に妙に得心してしまいました。
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